2017年末~2018年始における山の気象の記録
気象委員会
東京都山岳連盟に加盟している団体及び個人会員の協力により、2017 年末~2018 年始における山の気象デー夕 を収集した。そのデータをまとめた資料を作成したので、気象遭難事故防止や冬山気象の研究に活用していただきたい。
>> 詳細記録 (pdf)
期間概況
今年の年末年始の前に当たる 12 月 22 日には、長野県下の四阿山付近において遭難事故が発生し、23 日には西 穂高岳独標付近で滑落事故、そして年末に近くなって 27 日には八ヶ岳連峰の東天狗岳でも強風と降雪に見舞わ れ 2 名の男女が凍死症による遭難事故が起きた。
年末年始に入ると 12 月 31 日に白馬乗鞍岳付近にて、3 名のスキーヤーによる道迷いによって行動不能となっ たり、また燕岳付近で 1 名の男性が吹雪と疲労(凍傷)とによって、遭難事故が起きた。以上のこの期間、日本 付近は冬型の気圧配置が続き、各山域では季節風の吹き出しによる悪天(風雪)が続いた。そして、1 月 1 日に は八ヶ岳連峰の横岳付近では 2 名の男女が疲労と寒気により、行動不能となったが無事救出された。以上のよう に年末頃から年始にかけて長野県下の山域では遭難事故が多発したと、長野県警から公表された。
その中でも 12 月 27 日と 1 月 1 日の八ヶ岳連峰(東天狗岳・横岳)における遭難事故と燕岳の遭難事故は、山 の悪天の対応が大きく影響しているように考えられる。
各日毎の気象状況(山のライブカメラと実測)
- 12月26日
日本付近の気圧配置は西高東低の冬型気圧配置となっており、日本海側の山域では雪雲がかかっている。太平洋側では快晴の天気になっており、富士山もほとんど雲はない。しかし、八ヶ岳においては季節風の影響をうけ て稜線部は雪雲がかかっている。 - 12月27日~28日
両日とも気圧配置には変化はなく、天気の変化も同様。 - 12月29日
日本付近の気圧配置がようやく変化をみせ、冬型が緩みはじめた。このため後立山連峰方面では雪雲も切れはじ め、姿を見せはじめたが、燕岳周辺では雪雲が取れず、強風が吹いていた。一方、太平洋側の山域に当たる八ヶ 岳では雪雲も切れはじめ、稜線部も見えはじめてきた。富士山は相変わらず快晴の天気。 - 12月30日
冬型の気圧配置もかなり緩み、季節風も弱まって後立山連峰方面も姿を現し始めたが燕岳周辺では、まだ雪雲がかかっていたが、風は弱まってきた。槍ヶ岳や上高地でも晴れ間が見えはじめ、徳沢園方面でも晴れてきた。 一方、八ヶ岳方面では雪雲は取れ、富士山と共に快晴の天気となる。 - 12月31日
しばらく続いた冬型の気圧配置もおさまり、日本海には低気圧が現れて、日本付近の天気も冬型が消え日本海側の山域でも全般に雪雲が消えたが、日本海側の山域ではまだ雪雲が残っている所もあり、中房温泉付近でも雪 雲におおわれていた。
上高地周辺では曇り空となり、午後は雪がチラツク程度になる。しかし、上高地周辺の標高の高い稜線(森林 限界以上)では強風が吹いている。尚、冬型の気圧配置で天気の良かった富士山や八ヶ岳では雲が多くなった。 - 1月1日
日本海にあった低気圧は次第に日本列島から東に進み、気圧配置は次第に冬型となりつつあり、有明山の中房温泉付近でも次第に雪雲が現われはじめた。上高地では曇りがちの天気で時々晴れ間の出る天気となる。 一方、富士山や八ヶ岳方面では次第に雲が取れはじめる。 - 1月2日~4日
日本付近の気圧配置は冬型となったが、槍ヶ岳のライブカメラによると、かなり晴れ間のある天気があったようにみえる。他の山域でははぼ冬型の天気分布を示している。(燕岳周辺でも連日吹雪)
(文責 城所 邦夫)