2021年末~2022年始における山の気象の記録(公開済み)
東京都山岳連盟では、毎年この時季には加盟団体及び個人会員からの山行時における山の気象データを収集しています。しかし、今年度は年末年始頃の大雪予想やコロナ禍の影響などで山行が少なかった為に、気象データの報告が皆無の状態でした。このため今年度は「山のライブカメラ」を中心とした解説を行いましたので、気象遭難事故防止や冬山気象の研究に活用していただきたく報告いたします。
期間概況
今冬の12月は数年に一度とされる強い寒気の影響で寒波が来襲しクリスマス以降には北日本から西日本にかけて日本海側を中心に大雪に見舞われた。 この大雪のため交通網にも運休や通行止めの影響があった。その後、年末には、気圧の谷が通過し、強い冬型気圧配置となった。この冬型気圧配置は一時的に緩んだが、再び1月3~4日にかけて冬型気圧配置が強まり、日本付近の山岳地帯に荒天(暴風雪)をもたらした。この期間、氷ノ山で吹雪による(死亡1名)、富士山で滑落による(死亡1名)の遭難事故が発生した。
各日毎の気象状況(山のライブカメラと実測)
・12月26 冬型の強い気圧配置となり、日本海側の各地に大雪をもたらした。後立山連峰には、勢力
~27日 の強い雪雲がみられる。強い寒気の影響で、八ヶ岳、富士山にも発達した雪雲がみられ
る。輪島上空約5500m(500hpa面)では26日9時に-34.7℃が観測された。
・12月28日 各地に大雪をもたらした冬型の気圧配置も緩み、衛星画像でみられる雪雲の離岸距離も
広くなってきている。後立山方面も雪雲は少なくなってきているが、八海山や、笠ヶ岳
方面には、まだ雪雲がかかっている。一方、太平洋側に当たる八ヶ岳や富士山では、
雪雲も少なくなり、晴れ間も見える 。
・12月29日 日本海西部には弱い低気圧が発生し、冬型の気圧配置が弱まり、季節風の張り出しは
弱い。このため雪雲も取れ、八海山や後立山、尾瀬付近共に晴れ間のある天気となって
いる。但し、この谷の接近により、天気の崩れは早いので、山では注意が必要である。
・12月30日 日本付近は発達した低気圧を伴った気圧の谷の通過で。山の天気は全国的に悪天と
なった。強い寒気は南下し、発達した低気圧は日本列島を北上した。
・12月31日 強い寒気が日本海上空に流れ込んだ影響で北日本から西日本の日本海側を中心に大雪と
なった。日本付近を通過した深い気圧の谷は発達しながら千島方面へと去り、日本付近は
典型的な冬型となり、八ヶ岳方面、富士山にも雪雲がかかっている。一方、北アや日本海
側に当たる山域は、季節風の吹き出しにより風雪の天気となった山域が多くなった。
輪島上空約5500m(500hpa面)では31日9時に-38.1℃が観測された。
・1月1日 日本付近の冬型気圧配置は、一時的に緩み大雪の峠は越えたが、再び気圧の谷が日本海に
接近し、降雪が継続、まだ雪雲に覆われている。
・1月2日 日本海に接近してきた低気圧により、衛星画像による筋状の雲も少なくなり冬型気圧
配置が 一時的に緩んでいる。その後寒冷前線の接近で天気は崩れ、日本海側山域は、
雪雲におおわれてきている。
・1月3~ 再び日本付近は強い冬型の気圧配置となり、日本海側を中心に大雪となった。特に
4日 北海道では、発達した低気圧の影響で猛吹雪となった。
稚内上空約5500m(500hpa面)では4日9時に-43.5℃が観測された。
・1月5~ 冬型の気圧配置が緩み、次第に高気圧に覆われ、雪雲も取れ日本海側山岳に晴れ間も
6日 見えてきた。天気の変化は速く、5日21時には東シナ海に低気圧が発生し、南岸低気圧
となり、関東に接近した。
上空の寒気が強かったため、都心に10cmの積雪が観測され、4年ぶりの大雪警報が
出された。都心に10cmの積雪が観測され、4年ぶりの大雪警報が出された。
(文責 鈴木 和雄)