2022年末~2023年始における山の気象の記録(公開済み)

 

 東京都山岳連盟では、毎年この時季には加盟団体及び個人会員からの山行時における山の気象データを収集しています。しかし、今年度は年末年始頃の大雪予想やコロナ禍の影響などで山行が少なかった為に、気象データの報告が皆無の状態でした。このため今年度は「山のライブカメラ」を中心とした解説を行いましたので、気象遭難事故防止や冬山気象の研究に活用していただきたく報告いたします。

>>2022年末~2023年始の山の気象データ詳細はこちら(PDF)<<          

期間概況

 

今冬の12月は強い寒気の影響で12月下旬(クリマスの時期)に寒波が来襲し北日本から西日本にかけて日本海側を中心に大雪に見舞われた。 又、JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)が、複数個所に出現したため、九州や高知県、名古屋でも降雪に見舞われた。この大雪のため交通網にも運休や通行止め、物流等の乱れ、集落の停電等が発生し、社会生活に影響があった。その後、12月28日に気圧の谷が通過し、この冬型気圧配置は一時的に緩んだが、再び1月2~3日にかけて冬型気圧配置が強まり、正月寒波となり日本付近の山岳地帯に荒天(暴風雪)をもたらした。

この期間、
1/1八ヶ岳連峰赤岳(負傷1名)、横岳(救出4名)、1/2赤岳(死亡1名)、
1/7北ア西穂高岳(負傷1名)
1/8北ア八方尾根周辺(行方不明4名)等の遭難事故が発生した。 
(資料提供:島崎三歩の「山岳通信」より)

各日毎の気象状況(山のライブカメラと実測)

・12月25~26日 
冬型の強い気圧配置となり、日本海側の各地に大雪をもたらした。後立山連峰には、
勢力の
強い雪雲がみられる。強い寒気の影響で、八ヶ岳、富士山にも発達した
雪雲がみられる。

・12月27日 
各地に大雪をもたらした冬型の気圧配置も緩み、衛星画像でみられる雪雲の離岸
距離も広く
なってきている。500hPa面での日本海上空には気圧の尾根に
覆われてきている。
後立山方面、上高地は雪雲は少なくなり、晴れ間も見える。

・12月28日 
日本海西部には弱い低気圧が発生し、冬型の気圧配置が弱まり、季節風の張り出しは
弱い。
このため雪雲も取れ、上高地、尾瀬付近共に晴れ間のある天気となっている。
但し、この谷の接近により、天気の崩れは早いので、山では注意が必要である。

・12月29~30日
日本付近は発達した低気圧を伴った気圧の谷の通過で、山の天気は全国的に悪天と
なった。
約5500m(500hPa面)の寒気は前日より南下し、発達した低気圧は
日本列島を北上した。
輪島上空約5500m(500hpa面)では29日9時に90KTの風速が観測された。

・12月31日 
冬型の気圧配置は長続きせず、一時的に緩み、上高地では晴れ間の見える天気に
なってきている。

・1月1~2日 
上空の気圧の谷が接近し、再び日本付近は強い冬型の気圧配置が強くなって
きている。
輪島上空約5500m(500hpa面)では2日9時に
風速95KT、気温-27.1℃が観測された。
又、稚内上空約5500m(500hpa面)では2日9時に
気温-44.5℃が観測された。

・1月3~4日 
日本列島は、正月寒波の影響で強い冬型の気圧配置が続き、日本海側を中心に
大雪となった。
後立山、上高地、尾瀬、八ヶ岳方面、富士山にも雪雲が
かかっている。
この寒波の影響では青森県酸ヶ湯では、
3日最深積雪235cmが記録された。

・1月5~6日 
日本付近の冬型気圧配置は、一時的に緩み大雪の峠は越えた。
冬型の気圧配置が弱まり、季節風の張り出しは弱い。
このため雪雲も取れ6日には、上高地は
晴れ間のある天気となっている。

                       (文責 鈴木 和雄)