2004年度第4号

都岳連 最近の事柄の幾つか

 副会長 海老原 道夫

 都岳連は、今猛烈な勢いで大きな仕事をこなしつつ、更に法人化を実現すべく内部組織の整備、 総務・経理事務等の大幅な合理化、改善をすべく ダイナミックな動きをしています。まして昨秋の 全日本登山体育大会、今夏の国体関東ブロック大会など、数年あるいは数十年に一度と言うような大きな行事がここに加わり、担当のプレッシャー は大変なものと察せられるのであります。

一方この様に長いサイクルの仕事と並んで、毎年毎月のようにこなし続けるべき登山啓蒙活動、技術知識の指導活動、遭難対策の活動、救助活動 のような仕事については、常に活動し続けている訳なのです。 こんな仕事の一部について手伝わさせてもらいましたが、少し印象の強いものについて記させていただきます。 あ、あいつまた自分の事を書き出したぞ…とお感じの方には申し訳ない、その通りなのです。

昨秋から今春にかけて、C級の登山指導員から上級の登山指導員へ移行する検定に都合3回参加させていただき、また海外委員会の行った高所順応研究会に出席する機会がありました。いずれも私に とって初めての経験ではないのですが、これらに接していると役目を果たしながらも改めて勉強さ せてもらう事柄が多く、時として新鮮な刺激を受 けたりもしました。

検定会では、設定された岩場 レートを実感すべく、先立ってそれを登ってみたり登攀道具の使い方をチェックしたりしていると、自分の立場を忘れてついつい嬉しくなってしまうのが不謹慎なのであります。そして、受験者の真剣な姿勢が頼もしく又好ましく、その持っている実力を充分に発揮してもらいたいものと少し応援 じみた気持ちで検定したものでした。

しかし大事な技術を指導する指導員を審査するのに妥協は許されるはずもなく、今回は移行することができなかった受験者がいたのは、いたしかたのないことでした。 願わくば 次の機会まで一層のトレーニ ングと勉強を重ね、立派な上級指導員となってほしいものです。

高所順応研究については、 私は内容は薄いのですが年数だけは長く、そして懲りずに 失敗を繰り返し、言わばその落第生なのです。更 に不覚なことに、このレベルの高い研究会の認識 は自分が海外委員会の担当副会長になってから初 めて身近に感じたのでした。

そうは言っても、一度その内容に接するや眼から鱗というか、すっかりその内容に感心させられ、今は高所の登山を志す者にとってこの研究会は絶対不可欠なものと信じているのです。知っているつもりで知る機会の少ない高所順応についての医学的な裏付けを指導してくれる部門や、正真正銘の豊富な高所での登山経験を持つ講師の体験談は 誠に貴重なものであり、私にとって本当に有り難 いものでした。

おかげで一昨年、60歳を過ぎて出 かけたヒマラヤが一番上手く高度順化できるとい う喜んで良いのか、今更残念というのか、とにか く実に参考になったのでした。 重ねて記しますが、高所登山の志向のある人は 誰でも参加できる会ですので、是非参加してもら いたく存じます。そして近頃すこし地味な立場に いるが、大いに奮闘している海外委員会のメンバ ーには声援を送りたいものです。

私は前述した岩登りの分野や高所登山の分野では、かつては専門家のつもりだったが、気がついてみれば“元”とか、“かつて”とかが前につくこととなってしまいました。ここで改めて刺激を受け勉強してみると、それは誠に面白く楽しいもので、またまた腕まくりをしてしまいそうなのであります。