2008年度第4号

第二次都岳連構想

副会長 松元 邦夫

 皆様、先日の都岳連創立60周年記念式典に、ご出席を賜りありがとうございました。あれだけ盛大に開催出来たのも、皆様のご協力の賜だと感謝申し上げます。
早いもので、つい先日50周年を終えたばかりだと思っておりましたが、はや10年がたってしまいました。この間、岳連は都岳連大構想の下に、いろいろな事業を展開してまいりました。
その中で、特に目立つものがいくつかあります。第一に、社団法人化です。今でもいろいろな論議がありますが、みなし法人であった東京都山岳連盟が、法律の下で世の中に認められる団体になったことの意義は大変大きいと思われます。第二に、山岳保険の件です。都岳連共済がやっと軌道に乗った矢先、保険業法改正にともない、都岳連共済の存続が認められなくなりました。金融庁や保険代理店、弁護士等の指導の下にいろいろ試行錯誤の結果、事故分担金を翌年に払う制度の、保険であって保険でない、山岳保険?(特許出願中)を開発しました。社団法人の都岳連では法律的に運営が出来ない為、岳連と切り離した、新たな会社、日本山岳救助機構合同会社(jRO)を設立しました。
そしてこれからの10年は、創立70周年に向い、第2次都岳連大構想の下に、様々な事業を展開し、魅力ある都岳連をつくっていきたいと思っております。以前は都岳連に加盟することにより大きなメリットがありました。例えば、山岳保険、ヒマラヤ遠征の申請などでしたが、今や加盟することによる大きなメリットがあまりありません。これからは岳連に加盟することによる、新たなメリットを作りださなくてはなりません。

現在まだ、第2次都岳連大構想を思考中でありますが、すでに4つの特別委員会がスターとしております。
1.新法人法対応委員会、2.新規事業開発委員会、3.都岳連会員個人認証委員会、4.オフィススペース検討委員会などです。

幾つかのめぼしい構想を書いて見ましょう。

1.都岳連会員個人認証(全加盟団体員の個人登録化)

この考えはすでに個人会員制度ができた時からの考えです。すでに都岳連通信にも、会員委員会と称してこの構想は書いてあります。
約15年以前の都岳連は、加盟団体しか加盟できませんでした。しかし現在では、個人にも門戸を開放しております。いわゆる個人会員です。
現在世の中の不況あるいは、老舗の山岳会会員の高齢化などの理由により、一般山岳会、職域山岳会・学生山岳部の退会現象が著しく、現在都岳連に加盟している会員数は、個人会員約650名、加盟団体約262団体です。
岳連からの、岳連通信・講習会などの催しの連絡も、加盟団体の書類送付先で留まってしまい、一般会員に届かないのが現状です。このため有意義な講習会の参加者も、5~10人程度では張り合いもありませんし、赤字になってしまいます。ところが、jROの講習会は、個人宛のため参加者も100~200名と多くの方が参加されています。現在、加盟団体員数は約2万人と言われています。これからは、加盟団体員にダイレクトに情報を流す方法をとり、加盟団体員との接蝕を深め、変革を進めていきたいと思っております。

2.都岳連通信の充実

現在の都岳連通信は、忙しい中、広報部が手づくりをしている。そのため取材、広告取得活動がおろそかになっているのが事実です。編集製作を専門家に依頼し、充実を図り、収入を生み出す広報紙にしたいと思います。現在は、加盟団体、個人会員、指導員、公認リーダー、その他など1500部程度が発行されています。これを全会員2万人以上に発行すればどうでしょうか、もしかしたらスポンサーも付くかもしれませんし、他の山岳団体の発行機関紙の3倍になります。収入を生む広報紙になるかもしれません。

3.オフィススペース検討委員会(研修所及び事務所)

都岳連大構想の中に、自前の事務所・研修所を所有する構想がありました。これは、莫大な費用がかかるのと、踏ん切りがつかない為にどうしても残ってしまいました。
現在の事務所・会議室はジャンダルムさんの好意により、この利便性の良い場所で格安でお借りしています。この好条件の事務所をお借りできる事に大変感謝しております。
昔、日山協に間借りしていた事を考えると、本当に極楽です。しかし組織も人間と同じで欲が出てきます。社団法人になると財産を持たなくてはなりません。都岳連は、基本財産を持っております。この財産は、お金でも不動産でも構いません。今はお金ですが、この分は土地でも建物でもいいわけです。
私は、事務所も研修所も同じ建物の中で、収入を得られる研修所を作りたいと思っております。例えば、なるべく交通の便の良い所に、倉庫・空き工場又は体育館、一番良いのは空き地を借り、二階を事務所会議室、一階をクライミングジム、外の側壁を遭体・救助隊・事業部の研修用施設などを作り、一階のクライミングジムは、有料で一般公開すれば、この分で、施設の賃料は出ると思います。
このような場所、特に空き地があったら、ぜひ教えていただきたいものです。

4.国体の上位入賞

2013年に東京国体が開かれます。競技部長は、週2~3回ジムでトレーニングすれば、必ず上位入賞は間違いなしと言っております。上記のような施設を使い、東京国体に必ず上位入賞をしてもらいたいと思っております。

5.専門委員のプロフェショナル化

プロ(世間で言う山を専業とする方)とアマチュア(アマ)の違いの中に、プロは対価を貰える部分があります。プロの講習(お金を貰える)は、それなりの講習内容でなくてはなりません。
今現在の各委員会の専門委員の講習会はどうでしょうか。確かにお金を払ってもいい講習をしてくれる方もいます。また、アマだし、無料だから、しょうがないかといわれる講習会もあります。このような講師は、自分では気が付いていないでしょうし、また、まわりもアマだから大目に見ているせいか、努力も足りません。都岳連の講師は常に勉強し、プロ(都岳連外で対価を貰える)でなくてはいけないと思います。
現在は、プロ(専業)もアマも一緒になって行なうことが多い時代です。プロ(専業)とアマの違いは、所属している競技団体が、プロ団体かアマ団体かで、プロ(専業)・アマにわけられます。また、対価を貰えるか否かにも基準も置かれています。現実には技術・危機管理などなど、プロ(専業)とアマの違いはたくさんあります。都岳連には、山を生活の糧にする、プロ(専業)がたくさんおりますが、都岳連はアマチュア団体です。その都岳連が決めたことに従ってくれれば、たとえプロ(専業)の方でも、プロと判断しなくて良いと思います。

6.資金調達

2年続けて赤字を出しています。昨年は250万、今年はまだ数字が出ていませんが、赤字です。今月号の岳人に森谷会長が書いておられました。「山岳会は運営、都岳連は経営」と、その通りです。本来経営とは利潤を生み出す事を言います。
各委員会の事業は、必ず収益をともなわなくてはいけません(中には奉仕事業もありますが、年度末に黒字を出せばよいのです)。専門委員会は専門知識という、宝があります。この宝をもっと、大切にしなくてはいけません。専門委員会が赤字になることは、専門委員が自分達が持っている知識を、宝と考えないからです。というとまた岳連事業を金儲けに使うという批判が出ます。批判する人間は、経営能力が0です。資金があまって、天から湧いてくるわけではありません。今、岳連の収入は、分担金・個人会員の会費・事業部の収益が大きな財源です。しかしこの収入ではとても運営が出来ません。
以上6項目を挙げました、まだいくつかありますが、各委員会も上記の事項を、頭に入れて事業を展開していただきたい。都岳連は、個人会員、加盟団体員のものです。その会員のためにも、我々理事、運営委員、専門委員が一丸となって、岳連の主旨、①安全登山の啓発・普及、②高所登山の研究、③競技登山の普及・促進 ④山における自然保護活動の4項目を遂行していきたいと思っております。