2003末~2004年始における山の気象の記録

都岳連気象委員会

東京都山岳連盟に加盟している団体の協力により、6つの登山パーティから2003年末~2004年始における山の気象データを収集した。そのデータ をまとめた資料を作成したので、気象遭難防止や冬山の気象の研究に活用していただきたい。

2003年12月27日~2004年1月4日の期間には、2度の低気圧(または寒冷前線)通過を挟んで、弱い冬型の気圧配置が続く傾向が見られた。12月27日は強い冬型の気圧配置だった。しかし、28日には冬型の気圧配置は弱まり、北アルプス南部も南アルプスも晴れている。

12月29日には寒冷前線が通過した。これに伴い、 北アルプス南部でも南アルプスの蝙蝠岳でも曇りのち雪となった。また、蝙蝠岳手前では、足元をすくわれるほど強い風が吹いていた。新聞報道によれば、28 日入山、30日下山の予定で北アルプスの鹿島槍ケ岳に向かった単独行の登山者が、29日午前に標高約2,400mの山荘付近で目撃されたのを最後に行方不 明となった。寒冷前線通過に伴う悪天候が遭難を招いた可能性もある。

12月30日は冬型の気圧配置になったが、あまり強いものではなかった。輪島の上空500hPaの気温もー23.3℃であり、寒気はそれほど強くないこ とが分かる。北アルプス北部の気象データは収集できなかったが、北アルプス南部・中央アルプス・南アルプスでは晴れた所が多かった。

12月31日には二つ玉低気圧が通過した。北アルプスから南アルプスまでどの山も天気が悪く、数件の遭難が新聞で報道されている。北アルブスの燕岳付近 と蝶ケ岳付近では、いずれも単独行の登山者が悪天候によって動けなくなった。彼らは1月1日にヘリで救出されたが、手足などに軽い凍傷を負っている。

1月1日には戸隠連峰・西岳近 くの第二峰でも2人パーティがヘリで救出された。 この遭難は雪崩の危険を感じて身動きが取れなくなったことによるものであり、前日12月31日の悪天候も原因の1つと考えられる。 1月1日~2日は12月30日と同様に弱い冬型の 気圧配置であり、北アルプス南部・中央アルプス・南アルプスとも天気は良かった。3日~4日も弱い冬型の気圧配置が続いた。

これらのデータから、2003年末~2004年始の山は、真冬としては天気に恵まれた方であったと言えよう。それでも、低気圧や寒冷前線が通るときには半日~1日の短い間ながら悪天候に見舞われ、気象遭難も発生していることがわかる。

2003年末~2004年始の山の気象データ

北アルプス前穂高岳北尾根 どんぐり山の会

日付 場所 気象データ
12月28日 釜トンネル~徳沢 晴れ
12月29日 徳沢~八峰 曇りのち雪
12月30日 八峰(停滞) 雪のち曇り
12月31日 八峰(停滞) 大雪
1月  1日 八峰~釜トンネル入口 晴れ

北アルプス蝶ヶ岳CRUX ALPINE CLUB

日付 場所 気象データ
12月29日 中ノ湯~徳沢 テントを張った頃から雪
12月30日 徳沢~蝶ヶ岳避難小屋 晴れ
12月31日 蝶ヶ岳避難小屋 地吹雪
1月1日 蝶ヶ岳避難小屋~蝶ヶ岳~中ノ湯 快晴

中央アルプス木の会

日付 場所 気象データ
12月30日 千畳敷駅~檜尾避難小屋跡 晴れ
12月31日 檜尾避難小屋跡~檜尾避難小屋 湿った雪と東寄りの強風視界も不良
 1月  1日 檜尾避難小屋~木曽殿山荘冬季小屋 快晴
 1月  2日 木曽殿山荘冬季小屋~空木岳~池山尾根~中継ターミナル 快晴

南アルプス鳳凰三山CRUX ALPINE CLUB

日付 場所 気象データ
12月31日  夜叉神峠~南御室小屋
 1月1日 南御室小屋~鳳凰三山~南御室小屋 晴れ
 1月2日 南御室小屋~夜叉神峠 晴れ

南アルプス白峰三山同流山岳会

日付 場所 気象データ
12月30日 奈良田~池山吊尾根の標高2160m 快晴
12月31日 池山吊尾根の標高2160m~ 北岳~北岳山荘 曇りのち吹雪
 1月1日 北岳山荘~大門沢小屋 快晴
 1月2日 大門沢小屋~奈良田 晴れ

南アルプス蝙蝠岳~塩見岳 Bush山の会

日付 場所 気象データ
12月27日 田代発電所登山口~二軒小屋 晴れ
12月28日 二軒小屋~徳右衛門岳先の小ピーク 快晴
12月29日 徳右衛門岳先の小ピーク~蝙蝠岳~徳右衛門岳先の小ピーク 曇りのち雪 蝙蝠岳手前は足元をすくわれるほどの強風
12月30日 徳右衛門岳先の小ピーク~塩見岳~塩見小屋と本谷山の間 晴れ 蝙蝠岳手前は強風
12月31日 塩見小屋と本谷山の間~沢井 曇りのち雪のち雨